2005/12/09

ベトナムのハンコ屋

 贈り物を考えていたらスケッチにbutterflyという判子を扱う土産物屋の広告を見つけました。ベトナムは署名社会ですので、個人が印鑑を使う習慣はありません。ですので、社印や公的機関の判子を見ることはあっても、個人的に利用することはまれです。早速広告を見て行ってみると、店頭に商品を並べて客に見える場所で彫って見せていました。そんなところからも、店の看板商品だと分かります。もちろん、購入するのは日本人の観光客だけでしょう。店舗はドンコイとグエンフエに挟まれたマックティブイ通りにあります。

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 広告には、木彫、水牛角、象牙と書かれていましたが、象牙はほとんどないみたいなので水牛を選びました。ベトナムの農村風景を思い浮かべると子供が水牛にまたがっている画が頭に浮かびます。実際に田園に出かけると今でも水牛は農作機械として存分に活用されています。またこの国で牛肉と言って売られているもののほとんどは水牛ですので、食用としてもホルスタイン牛などよりもはるかに存在感があります。おそらく判子に利用される水牛角もオランダ水牛とかではなく純国産なのだろうと思います。それには文句はありません。

 判子を選んで字を指定します。私は4文字指定して対角で2文字ずつ白字と赤字にした上で、さらにそれを寄せて脇に絵を入れるように言ってみたんですが、特に問題なく受け入れられました。ただ、問題なのはみんな漢字を知らないことです。彫る人間がその字を知らずに書体の書籍を見ながらみようみまねでやっているという危うさです。ですから文字の形がかなり怪しくなってます。写真のものは彫り代込みで20ドルでした。値切らなかったので分かりませんが、多少は安くできるかもしれません。
 観光客相手ということもあり、注文から受け取りまで数時間でもやってるみたいでしたけど、そんなに急がないので翌日仕事が終わってから夜に散歩がてら受け取りに行きました。袋から出してよく確認してみると、字が間違ってました。間違えた文字はまったく別の字というわけではなく、例えばへんのみでつくりがないとか、かまえの中身が何もないといった類の、漢字を知っていればありえない失態です。試し押しした紙が同封されていましたし、うっかりしてたというわけではありません。まぁベトナム人相手に抗議しても、自分の非を認識できないのですから時間の無駄です。店員はもちろん漢字を知らないので、私の書いた字と本にある字を見比べてようやく理解したようでした。当然謝罪の言葉もなく翌日また取りに行くことにしました。
 いやな予感がしていましたがやはり的中しました。少しはベトナム人のことを信じて、全て削り落としてからもう一度やり直してくれるのではないかと淡い期待を抱いていたんですけど、やっぱりそんな事をベトナム人に望む方が間違っていました。白字の不足分なら彫り足せば問題ないですが、間違えた箇所は赤字の箇所でした。つまり、そこは彫り落とされて既になくなっているわけです。受け取ってから明るいところでよく見ると、なにか詰め物がされていてその部分に不足分が彫られていました。瑕がついた判子を修理するために使う材料なんだろうと思います。それを新品の商品に使うあたりがベトナムです。しかも、それに全く後ろめたさを感じていないこともベトナム人と日本人が永遠に理解し合えない考え方の一つです。そのベトナム人にしてみれば、たいした技術もないのに相当の稼ぎを得ていると思われますが、給料の高さと責任感の重さは比例しないのがベトナム人なのです。
 中国に行くと大理に限らず土産に判子を作って来てくれる人がいます。大変ありがたいのですが、土産にもらう中国の判子はでかいのでなかなか使う場所がありません。荷物の受け取りに配達の人に出したら、ちょっとひかれそうです。以前銀行で資産運用相談なんかをする少し個室っぽくなってる窓口で順番を待っていたら、中国語を話す家族が口座を開設しているところでした。そこで鞄から取り出したのが、玉璽かと見紛うほどの周囲に飾り彫りがされた立派なものでした。「お前は皇帝か。皇帝なのか。」と笑いを堪えていましたが、行員は淡々と手続きを進めていました。慣れてるんでしょうか。中国人は普段からあんな立派な判子を使ってるんでしょうか。

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