2004/08/11

ベトナムの2000ドン硬貨

 今年の11月から日本では20年ぶりに新札が発行されます。『お金について[日本銀行]』そういえば当時は小学生だったので札の見た目が変わっても、普段ほとんど馴染みがない分あんまり衝撃的な印象はありませんでした。そんなわけで、私にとっての日本円は現在の金でありますので、途中二千円札や五百円玉、新五百円玉などの発行もありましたが、今回の刷新は個人的には初めて経験するものといえると思います。
 実はベトナムでも昨年12月17日に新しいデザインの札と、暫くの間この国では使用されていなかった硬貨がお目見えしました。それまでベトナムで流通していた紙幣は、百、2百、5百、千、2千、5千、1万、2万、5万、10万の10種類で、これらは全て紙幣でした。

 10万ドン札が発行されて最高額が更新されたのはほんの数年前のことでしたが、成金が増える速度が予想以上だったのか、権力者の蓄財のためなのか、あまり間を置かずに紙幣の最高額がさらに50万ドンに引き上げられました。そして新紙幣発行と同じ日にまず2百ドン、千ドン、5千ドンの硬貨がお目見えし、その後一月ほど遅れて5百ドンと2千ドン硬貨が流通しはじめました。そしてなぜか残った券種の中で5万ドン札もデザインが変更されました。恐らく5万ドン札は長い間最高額であったために偽造の対象になっていたことに対する処置といって間違いないのではないかと思います。また、長らく硬貨を発行しなかった理由は、恐らく鋳造コストの一言に尽きると思います。つまり発行しなかったのではなくて発行したくても出来なかったと言った方が正確なのではないでしょうか。
 しかし、ニュースなどでその話題には触れるものの実物を目にするまでにはだいぶ時間がかかりました。どこの国でも通貨が刷新されればその目新しさから多くの人が両替に行くことは想像できます。ましてこれまで無かった硬貨が出来るとあってはなおさらです。ある銀行の前には当日の朝から数千人が列を作ったそうです。ここで残念に思ったのは、いかにも顧客を軽視した-あるいは顧客サービスと言う概念が無いといったほうが言いと思います-ベトナム人行員の応対でした。彼らが一般の顧客に出す前に、内部で自分たちや知り合い、家族の分を優先して両替した結果、外向けに用意された分がほとんど残っていなかったと言う話を耳にしました。
 発行後数ヶ月という月日を経て普段の買い物の中でもようやく普通に出回り始め、以前は釣銭で受け取った際にたまに見る珍しさを感じていましたが、最近ではその感覚も薄れてきました。ベトナムでは口座間の決算は無論のこと、銀行預金や給与振込みさえも普及していません。口座を持つベトナム人がいないのは、以前の国家が運営する銀行、ひいてはベトナムの通貨への信用がなかったためです。戦乱、デノミ、高インフレが銀行よりも金やダイヤといった現物思考に走らせました。そんなわけでも銀行預金がないからといっても米国とは事情が違います。(ベトナムには小切手(当座預金)の文化もないですし)
 上記のような理由からベトナムではほとんどの通貨は市場に滞留しつづけ、他の途上国でもよく見られるような、こ汚い病原菌の塊のような札を手にすることがあります。そんな事情がありますから、紙幣の切り替えや硬貨発行の際に政府の広報は、これまで通り旧通貨も混在して利用できると公告していました。日本では今年の11月の発行後に、賞与支給と数回の給与の支払いを経てそのほとんどが入れ替わってしまうのでしょうが、ベトナムでは半年経った今でさえ新しい通貨を見ることさえ稀だという状況です。
 余談ですが、以前用事があって銀行にいくとタイガービール(シンガポール資本のビール会社でベトナムでは最高級の一つとされる)のバンが入り口に乗り付けて、警備員に囲まれながら札束の塊を窓口に積み上げていました。札は剥き出しの状態で紐で括られた一つの塊はみかん箱大の大きさにもなり、数えてみるとその数は数十個にも及びました。海外ではなかなか見られない光景です。それがどこかの店舗分なのかホーチミン支社の全体の売上なのか、さらにはその日の売上なのかその月の売上金なのか詳しいことはよく分かりませんが、普通は一般客と入り口を分けるんじゃないでしょうか。そんなことより、口座間決算にした方が安全なんじゃないかと余計な心配をしてしまいます。大企業がそれですから一般人が「振込み」などという高等技術を習得するにはなお一層の精進が要求されそうです。
 2,000ドン硬貨が3枚。今日、スーパーで買い物をするとお釣りで帰ってきました。「そういえば、発行されたとは聞いていたけど現物を見るのは初めてだなぁ。」発行後半年以上が過ぎましたが、手の中の金色の硬貨を見ながらそんなことを考えました。

2 件のコメント:

  1. Kimitoshi Saito2004年8月17日 10:46

    以前お便りしたタツノの齊藤です。
    2000ドン硬貨は、前回出張時にドルを両替した時に手渡されたので、記念に日本に持って帰りました。公衆電話に使用するために発行したとか、別のサイトで読んだ記憶があります。
    さて、小生の仕事がらお客さんはペトロリッメクス社さんですが、この6月末に、POS(レジ機械)を導入してクレジットカード決済ができるシステムを開発したいとの意向を受けて、ガソリンスタンド用システムをプレゼンしてみました。ところが、すぐに導入できる見通しが無いのでもう少し模様見合いをしたいと回答を受け、乗り気で行ったのに少しがっかりしたことがあります。
    ベトナム人のクレジットカードは、引き落としまでの与信期間が無く、日本で言うところのデビットカードのようにすぐに引き落としされるシステムと聞き及んでいましたので、銀行制度とか個人消費者に対する与信制度とかはまだまだこれからで、金融システムが未熟なため、流通業界におけるPOS導入は当面無理かなと感じたのが、本音です。
    タイガービールの見聞は、これら小生の感想を裏付けるような気がしまして、納得した次第です。
    貴方のブログは非常に役立ちます。勝手なお願いですが、是非、次回の出張時にはサイゴンで食事でもさせて頂きたいのですが、どうでしょうか?
    ところで、旧日本帝国陸軍の職業軍人さんがベトナム国軍の立ち上げ時期に参加して、現地の兵士と共にフランスに対する植民地戦争を戦った事実があるようですが、ベトナムの人たちには認識がありますでしょうか?
    出張して感ずるのは、ベトナムの人たちは、日本と言う国家と民族に対して友好的だと思うので、このようなことも影響しているのかと思う次第です。
    敬具

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  2. こんにちは。
    硬貨導入の時にはテレビでいろいろと報道がありました。仰るとおりその中で公衆電話を含む自販機の類への利用なども挙げられていました。ただ、よく言われることですが、街中に金の詰まった箱が置かれるのは治安の良い日本のような国でないとちょっと難しいかもしれませんね。
    今は公衆電話はプリペードカード方式ですが、カードの最低価格である3万ドンを惜しむようなベトナム人は外では郵便局で電話をかけているようです。(ベトナムの郵便局は公衆電話サービスの提供も大きな収入源です)近くに郵便局が無い場合は、個人経営-といっても自分の電話を店先で貸してるだけ-の公衆電話を利用します。通話時間が表示される電話機の場合はそれを、無い場合は隣で時計かストップウォッチで測った時間を基にして、主人が値段を決めます。個人経営はボッタクリ度が高いです。
    クレジットカードですが、数年前はほとんど見ませんでしたが、ここのところ外国人が利用する場所以外のところでもよく店先で提携を示すマークが表示されているのを見かけるようになりました。どこのカードか忘れましたが、そのカードの場合は利用者が前もって銀行に入れておいた金額をカード会社が毎月確認してその範囲内でのみ利用が可能になっていたと記憶しています。正にデビットカードですね。ただ、確か月間の利用額に上限があったかと思います。(海外のデビットカードにもあるのかもしれませんが)
    前にもブログに書いたことがありますが、あるスーパーでレジでカードを差し出したら店員に入り口のCD機でおろして来いと、受け取りを拒否されている買い物客を見たことがありました。札束を握り締めて給油している店員がカード払いを受け入れるのはまだ先かもしれませんね。
    その前に、せめてバイクぐらい満タンにできるぐらいの経済力が必要かもしれません。
    インドネシアの話は良く聞きますが、ベトナムでもそうだったんですか。いちおうアジアを解放するという大義名分が大東亜戦争にあったのかも知れないですけど、当時のベトナム政府はともかく一般のベトナム人がどう見てたのかはよく分かりません。ベトナム人は公の場で政治の話をするのはタブーなので、そんなに親しくない人から本音を聞き出すのは難しいです。
    よくベトナムにいらっしゃるようですのでご出張の際にお食事でもできたらと思います。

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