2003年度の交通事故による死者数は11,864名だったそうである。日本で1万人を超えたときに交通戦争と騒がれたことがあったが、ベトナムではその数字をかなり上回っている。しかも人口比(日本が約1億3千万人に対しベトナムは約8千万人)や労働力人口(発展途上国であるベトナムは平均年齢も日本よりかなり若い)を考慮すると、この数字は相当なものだ。発表によるとほとんどがバイク事故によるものとされているが、それはベトナムの状況を一度でも見たことがある人なら容易に想像できそうである。最近は自家用車を購入する特権階級や事業で儲けたにわか成金が増えているのだが、国全体を見ればまだまだベトナム人の足はバイクなのである。
交通法規についても最近までかなりいい加減なものであった。現在の免許制度が確立されたのもほんのここ10年程のことだし、信号機が取り付けられ始めたのもここ5年くらいのことだと記憶している。私が初めてサイゴンを訪れたときも、信じられないかもしれないが、大都市でもめったに信号を見かけることがなかったのである。そんな俄かごしらえのものであるわけだから、交通規則を守るという意識もまだ充分に浸透していない。赤信号でも「行けそうなら行く」人が多いのである。「警官がいなければ信号なんて関係ない」と考えている人も多い。
交通法規の整備とともに、これまでベトナムでは無視されてきた先進国では当たり前の決まり事が徐々にベトナム人ライダーに影響を与えている。その一つがミラーである。ここでは隣を走るバイクとハンドル同士がぶつかるほど密着した距離で走ることも多いので、当然ミラーは破損しやすく走行にも邪魔なものと考えられている。であるから、バイク購入後にすぐに取り外すのが一昔前は当たり前のことだった。しかしながら、法改正によって罰金を恐れる国民はしぶしぶミラーを取り付けるようになってきた。それでもなお左右のミラーを逆につけたり(自分の顔しか映らない)、異常に小さなものを取り付けて抵抗する人たちもいる。それを見るといつも、ヤンキーがかぶる極小ヘルメットじゃないんだからと思うわけである。
さらに、ヘルメット着用も法制化され義務付けられそうになったのだが、国民の大反対でその規則はお流れになってしまった。確かにこの暑さでヘルメットはちょっとつらい。そんな中、自主的にかぶっている人もたまぁに見かけるのであるが、相当蒸れそうで見ているこっちの方が気分が悪くなる。しかもフルフェイス。
数日前にも、同じクラスの学生同士が乗り合わせていたバスが事故に遭い多くの犠牲者が出た。可哀想な事件だが、その報道で驚いたのは同じクラスのバスに乗っていなかった学生が教室に集められてインタビューを受けさせられていたことである。ここではメディアの自主規制などという考えは無く、どんな事故写真でも報道されるし、取材を受ける側の人権などというものもない。メディアの背後に鎮座する権力が見え隠れするため、国民もいやいやながらも答えざるを得ないのかもしれない。
前に見たある番組のインタビューで印象的だったのは、麻薬中毒者の更正施設で訓練を受けている人たちが犯罪経歴や麻薬を使用するに至った経緯などを事細かに話していたことである。報道する側は抑止効果を狙っていると言うことは分かるのだが、当事者にとってはかなりの恥さらしなんじゃないか。しかも個々人のインタビューは目線ありだったが、全体の活動の映像は目線なしで放映されていた。髪型や体型でばればれなのである。
【追記 2006/03/31】
現在、幹線道路など一部の道路ではヘルメット着用が義務づけられている。法規の詳細はよく分からないが、後部座席の人間はかぶってないところをみるとどうやら運転者のみ規制の対象なのか。むしろ危険度の高い後ろの人にかぶらせた方がいいような気もするが。
日本は10年ほど前をピークにして交通事故死亡者が年々減少しているようだ。先日読んだ新聞記事によると、事故発生から30日以内の死亡者数が約7000人にまで減ったらしい。道路整備や交通規制などの環境整備とエアバックなどに見られる車そのものの安全性向上の賜物か。一方ベトナムは行政の努力で数値改善といくか。まぁ当分は志望者数鰻上りなんじゃないかと思う。
��この記事は2004年3月10日に書いたものに加筆・修正しました。内容は当時のものです。)
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