2010/06/23

新幹線計画否決詳報

NNA21日】国会は19日の閉会直前に、中央政府が国会に承認を求めて提出していた南北高速鉄道(新幹線)建設計画案について、会期中の討議結果を受けて内容を大幅譲歩・修正した承認決議案を採決にかけたが、建設推進案は実質否決された。資金不足という根源的な問題に加え、計画の妥当性に関して議員らの懸念を、閣僚が最後まで払拭することができず異例の結果につながった。日越政府の今後の対応が注目される。【遠藤堂太・岡和明】
ベトナム政府は国際協力機構(JICA)に計画の事業化調査(FS)を昨年末に要請していたが、否決されたうえでFSを行うかは、今後の日越政府間の話し合いで決まる見込みだ。
日本の外務省によると、国会で可決された場合、約2年間かけてJICAが詳細なFSを行い、日本政府として建設に円借款供与を行うかの判断を下す予定だった。
ベトナム政府は当初、2020年の全線開通(ハノイ~ホーチミン市、 1,600キロ)を目指していたが、昨年末には20年の部分開通(2区間)にトーンダウン。5月20日の国会開会後は、反対意見が議場の内外で次第に強まる中で、14年着工25年の部分開通(2区間)、さらには20年の1区間部分着工と計画を遅らす妥協案を示し、決議前に事前アンケートまで採る異例さだったが、可決には至らなかった。
■2案で採決
20日付グオイラオドン電子版などによると、決議案は、「高速鉄道の建設を優先課題とせず交通インフラ整備を進める第1案(実質建設反対案)」と「高速鉄道建設を推進する第2案(建設賛成案)」を含み、それぞれの案について採決した。
その結果、第1案に賛同する議員が42.39%、賛同しない議員が38.48%と、建設に反対の議員が4割以上と多かったが、過半は占めなかったため、建設反対を決議するには至らなかった。
第2案については、賛同する議員が37.53%、賛同しない議員が42.19%と、建設に賛成する議員が、そうでない議員を下回り、建設推進案は承認されなかった。
��回の採決を通じて、高速鉄道建設に賛成の議員が37~38%程度で、反対の議員が42%余りであることが鮮明になった。議員の意見が2つに割れている状態で、国会は建設について、賛成の決議も反対の決議もできなかったが、政府が求めていた国会承認が実現しなかったという点では、政府の建設計画は事実上否決されたことになる。
■ 政府提案否決は異例
ベトナムの国会はこれまで、政府が国会に承認を求めて提出する大型事業計画に不備や疑問が多い場合、当初の討議では、多くの議員が強い反対を述べるが、最終的に採決で過半数の賛同を得て、政府計画の推進を認める国会決議が出されるのが通例だった。
昨年論議を呼んだ「中部高原のボーキサイト開発計画」「中南部ニントゥアン省での国内初の原子力発電所建設計画」も、ほぼ同様の経過で、推進決議に至った。
今回も同様の道筋をたどる可能性が大きいと予想されたが、国会内の意見分裂は収まらず、両派すくみ合った状態で、政府の事業計画が実質否決される異例の結果となった。
国家予算の3倍近く、国内総生産(GDP)の5~6割に相当する560億米ドルの巨大事業で、重債務に陥る恐れや、他の交通インフラ整備の妨げとなることを、多くの議員が懸念した。
会期中、グエン・タン・ズン首相をはじめ各閣僚は、楽観論を振りまいたが、その根拠は十分示されず、4割を超える議員の懸念はついに払拭されなかったようだ。政府の強い働きかけにもかかわらず、賛成議員の数が反対議員に及ばなかった点も注目される。
■政府権限制限しても否決
決議案では、第2案(建設賛成案)が可決される場合、国会が政府に対してどのような建設方式を認めるかについて、これまでの討議と会期末近くに実施された議員アンケートを参考に1つの方式が示され、これに賛同するかどうかが付帯的に採決されたが、賛同する議員が31.85%、賛同しない議員が34.48%、棄権が16.63%で、国会としては特定の建設方式への支持は表明しなかった。
決議案中に示されていた建設方式の骨子は以下の通り。◇実現可能性と経済効率を十分調査する◇ハノイ~ビン(北中部ゲアン省)の280キロ、ホーチミン市~ニャチャン(中南部カインホア省)の380キロのいずれかの区間を選択して、国会の承認を受けた後、2020年までの適切な時期に着工する◇同区間の建設と営業結果に基づいて、その他の区間の建設の可否を国会に諮る――。
同方式は、計画についての政府の権限を大幅に制限した内容だが、それでも賛同した議員は31%余りと、3分の1にも満たなかった。
国会決議案には、次の会期での「継続審議」の形式はないが、政府が計画を再検討して、次回以降の国会に別の建設方式を再提案する可能性はある。
■ネットサイトの読者も「否決」
大手ニュースサイトのVNエクスプレスが1カ月近く受け付けた読者投票でも、「政府の高速鉄道建設計画に賛同しない」と「計画は時期尚早」との意見が、合わせて7割を超えた。
投票総数7万1,136票のうち、政府建設案に賛成が26.8%、不賛成が 36.3%、時期を遅らせるべきが35.8%、その他の意見が1.1%だった。
■インフラ輸出戦略に打撃?
資金が最大のネックだったといえる。
昨年春にはJICAの資金面に関する緊急調査(野村総合研究所が実施)で、「資金の80%以上は国家予算から支出しないと事業採算性が合わない」と報告。土木インフラ費用を含めると事業採算性は見込めないとする一定の判断は出されていた。また、JICAが今年提出した「持続可能な総合運輸交通開発戦略策定調査(VITRANSS2、ビトランス2)」でも、新幹線の事業採算性が見込まれるのは、交通需要拡大が予想される2036年以降と報告されていた。
ビトランス2には、単線で運行されている在来線(1,000ミリゲージの狭軌)の高規格化なども提案されていたが、ベトナム側はあくまでも標準軌で世界最高速度の新幹線方式にこだわったようだ。
なお、新幹線計画は2006年11月の日越首脳会談で日越3大案件の一つとして取り上げられたが、着工時期などは明記していなかった。日本政府は、新幹線建設の資金協力を行うとは公式発表していないし、ベトナム政府も「日本の新幹線方式を採用した」とは公式発表していない。今国会の答弁でホー・ギア・ズン交通運輸相も「技術や資金の提携先・国は決まっていない」と述べていた。
今回の決定が、「日本官民のインフラ輸出戦略に打撃を与えた」との日本のメディアの報道もあるが、ベトナムで今すぐ新幹線車両やシステムをベトナムに売り込もうとしていたメーカーはないし、事業の行方に疑問を持ちながら推移を見守っていた。
一方で、将来には高速鉄道が必要とされる機が熟してくることや在来線の複線化は必要なため、用地確保や人材育成に向けた努力は引き続き必要だ。こうしたことを踏まえ、FSを日本が受けるかも注目される。
 要は金がないということのようですので、資金繰りさえ何とかなれば新幹線が採用される可能性はまだありそうです。

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